キーンコーンカーンコーン
朝のホームルームのチャイムと同時に入ってくるなり
エンのクラスの担任が転校生の紹介を始めた。
担任「突然だが、転入生の紹介をする
本当は昨日の時点で紹介できるはずだったんだが、急な転校だったために」
その担任が紹介を始めた横であまりの偶然を目の当たりにしたエンたちが
他愛のない会話を始めた。
教室の窓側。
後ろから2番目の席。
炎「なぁ、水…」
水「言いたいことはなんとなく分かるけど、言っていいわよ」
スイの席は窓側から2列目、後ろから2番目のエン隣の席に座っている。
オンはスイの席の一つ前の席に座っていて、
ヤナはエンの一つ前の席だ。
担任「では星月、入れ」
担任が一人目の転入生の名前を呼ぶ。
炎「偶然だか運命だかは知ったこっちゃないが…
漫画やドラマじゃあるまいし…
こりゃ出来すぎじゃないか?」
水「さすがに私も驚いてるわ…あるところにはあるものね…偶然や運命?」
そう、まさに偶然や運命なんて言葉で例えたくなるくらい
驚くべきことだった。
突然の能力戦闘。
そこに現れた少女。
居候することになった少女。
そして、同じクラス。
全てが突然だからもう驚き疲れている。
音「でも、彼女にとっては良いことですよね
一人でも知り合いがいるのなら」
柳「うん、そうだね」
そんな少女ではあるが、
少女にとっても驚くべきことであり、
北海道から突然誰も知らない場所に来たこと…
不安でいっぱいであろう。
そんな少女の気持ちを気遣ってか、
エンが一言だけ少女を含めた自分たちの関係を口にした。
炎「ともだち」
水「え?」
炎「あいつ含めて友達だろ?俺ら。
だから問題ない」
水、音、柳「うん!」
エンの当たり前だけど、
真っ直ぐな言葉に3人は小さく返事をした。
今はホームルーム中だから。
朔夜「月星学園・北校から転校してきました”星月朔夜”です。
急な転校でいろいろ不安いっぱいですが、宜しくお願いします!」
後ろの席でもよく聞こえるサクヤの声。
エンはどこか微笑ましそうにそれを聞いていた。
炎「北校…?
(後で聞いてみるか)」
担任「あと、もう二人転入生を紹介する、入れ」
転入生の紹介が終わると思いきや、
担任はもう二人の紹介を始める。
”月星学園”はエスカレーター式のマンモス校のため、
外部からの転入生は珍しいことだった。
増してや3人ともなると、この学園の誰もが驚くであろう。
柳「転校生だけでも珍しいのに
その3人ともが同じクラスなんて…」
担任「では自己紹介を」

ひより「ひよりです…本名は内緒の方向でお願いします」
背丈は中学生…人によっては小学生とも思えてしまう小さな女の子。
その女の子は、ちょこんとマイペースに短い自己紹介をした。
炎(小さいな…)
高海「ってこらこら!
いくらなんでもわけわかんないですよ!」
直後、女の子の自己紹介はもう一人の転入生の男性によって却下された。
男性からすれば、突っ込まずにはいられなかったようだ。
ひより「じゃ、高海ひよりで」
高海(今決めたなこの人…しかも俺の苗字…)
唐突な漫才のような二人はどうやら知り合い同士らしい。
その言動からそう理解できるが、
親戚と言ってしまえば、お終いだが、
兄妹と言うには同じ学年なわけがないし、
だからと双子と呼べるほど似てもいない。
ひより「こいつとは親戚です」
高海「えと…高海秋也です…”アキ”って呼んでください」
水「随分とアバウトね…」
アバウトではあるが、
ひよりたちからしてみれば無難な挨拶なのだ。
担任「星月の席は睦月の後ろの席だ。
高海ひよりは水無月の隣…そう、そこの空いてる席だ。
高海秋也はその後ろだ。
…ではホームルームはここまで
クラス委員長の水無月と…あと睦月」
無事に自己紹介を終え、席の案内も終え少し落ち着いたところで、
担任がスイとエンを呼んだ。
3人の転入生への学園案内だろう。
水「はい」
炎「やっぱ呼ばれるよな〜」
やはり愚痴が出た。
どうやら二人とも呼ばれることは察しが着いていたようで、
エンはやはりかと少し呆れた返事をした。
スイはクラス委員長を務める身であるため、
担任に言われずともそうするつもりだった。
もちろんこの場合もエンは付き添いでスイに呼ばれることになっていただろう。
担任「放課後校内を案内してやれ
睦月は水無月の手助けをしてやれ」
水「はい」
炎「うぇ〜い」
__________
キーンコーンカーンコーン
本来なら昨日の時点で転入を済ませ、
初日は始業式だけで終われるはずだったのだが、
2日目の今日からは通常の授業が始まってしまっていた。
よってサクヤにとっては緊張している余裕はあまりなかった。
朔夜「終わった〜!
疲れたよ〜」
炎「だろうな…
休み時間の度に質問攻めだったもんな」
そんな余裕のない状況で転入生なら誰でも経験するであろう
質問攻めに休み時間の度にあってしまい、
頭がぐるぐる回っていた。
当然ひよりやアキも同じ状況に巻き込まれていたが、
どうやらいくつかに答えるだけで上手く逃げていたらしい。
朔夜「ここまでとは思わなかったよ〜」
水「エスカレーター形式の学園だから転校生が元々少ないのよ
もうしばらくは続いちゃうかもしれないけど、頑張ってね」
朔夜「おうさ〜
そだ!学園案内!行こう!楽しみにしてたんだよ」
ここからはサクヤが楽しみにしていた学園案内。
恐ろしく広い”月星学園”は
放課後の少ない時間では、
学生校舎の紹介だけで終わってしまうほどに広い。
水「えぇ。
高海さんたちも行きましょう」
ひより「…うん」
高海「宜しくお願いします」
スイとエンは3人の転入生を連れて生徒校舎を案内するために歩き出した。
朔夜「柳ちゃんたちも一緒に行けたらよかったのにね〜」
炎「二人とも部活だから仕方ないさ」
ヤナもオンも一緒に回れたらよかったのだが、
少々多人数になってしまうこともあったし
たまたま2人は部活があったため回れないのだ。
水「放課後だけじゃあんまり回れないけれど…
どこから案内しようかしら
ねぇ、エン…?」
炎「……」
水「エン?」
生徒校舎と言っても幼稚舎から小、中、高、大学と専門校舎まで複数あり、
どこから回っても時間がかかる。
そのためスイはエンにどこから回れば良いか訪ねてみた。
スイはクラスで委員長を務めるほどにクラスメイトに信頼されているし、
生徒会に誘われるほどに認められてもいる。
だがいつもどこかで迷っているし
エンとは幼い頃からの付き合いもあって
意識してではないが
こうしてエンに頼ってしまうところがある。
そのエンは転入生の一人の少女をしかめっ面でまるで睨むように見ていた。
ひより「な、なによ…」
相手の少女は当然どうすればよいかもわからず
睨み返した。
炎「小さいな、お前…」
突然。
エンの口から出た一言は気を遣ってか、
思っても口に出さなかった身長の低さについて、
あっさりと、一言目にしてトドメの言葉を投げかけた。
ひより(カッチーン)
どこかで何かが切れる音がした。
ひよりのことをよく知る高海は実際に聞こえなくても、
なんとなく聞こえた気がした。
高海「あ…」
水「エン!失礼よ」
その高海の小さな一言を聞いて、
やはりまずいと思ったスイはエンを一括した。
炎「あ、いや…
うん…悪い…」
ひより「平気。言われ慣れてるから…
それに変に気を使われるより全然いい」
高海「…」
わかっていたのだろう。
スイの一括ですぐに謝ったのだが、
自分の気持ちには嘘を付けそうにない。
炎「そか…
いや、うん、小さいなホント」
ひより「良いとは言ったけど連呼しないでよ」
ひよりにしてみれば慣れてはいるだろう。
でも誰だって嫌と思うことを連発されたくはない。
炎「悪い悪い」
ひより「頭撫でるな〜」
朔夜「私も〜」
ひより「増えた〜」
炎「わはは」
この時だったかもしれない。
エンは勿論、スイにとってもひよりにとっても
サクヤにとっても…友達として
自然に接することが初めて出来た瞬間だったのかもしれない。
意識してではない。
でもその空気を作ったのは間違いなくエンだった。
高海「……」
水「面白い…と言うか…不思議なやつでしょ…エン」
不思議な存在と感じた高海はびっくりした表情でエンを見ていた。
あまり他人に心を開くことのないひよりが感情だけではなく、それを言葉にしていたのだ。
今だから普通に話し、微妙ながらも笑顔を作れるひよりだが、
たったそれだけの会話と笑顔を交わすのに数年かかっていた。
初めて会って、ちょっと会話しただけで、
こうも簡単に感情を引き出せてしまう人が居るなんて思いもしなかった。
高海「水無月さん…
えぇ、不思議な人ですね
ひよりさんの感情をアッという間に引き出してしまうなんて…
あんなに簡単に笑顔を出せてしまうなんて」
水「私には分からないけど…ひよりさんが背負ってる何かを
感じ取ったんじゃないかしら…」
高海「え…」
水「あいつ、あんなに凄いのに、
自分では全く気付いてないのよ
あんなに凄い…強いやつなのに…」
高海「本当に…不思議な人ですね…」
水「ふふ。
覚悟しておいた方がいいわ、
エンに関わると毎日が劇的に変わるわ、きっと」
高海「楽しみにしています」
__________
案内の順番を決めたエンたちは小等部の校舎に来ていた。
水「ここが小等部の校舎ね」
炎「お前、こっちの方が合ってるんじゃないか?」
さっそくエンがひよりをからかいだしていた。
一々反応するからエンも、からかわれているはずのひよりでさえも楽しんでいた。
ひより「むぅ…
まだ”小さい”と言い足りない?」
炎「背だけじゃねぇだろ?小さいの」
ひより「ムツキ〜!」
高海「押さえてくださいよ、ひよりさん」
水「もぅ…」
そんなまるで兄妹の様な二人を困りながらも笑って見守る高海とスイ。
朔夜「しっかし広いよね〜!
さすが本校(東校)!
北校とは全然違うね〜」
炎「そだ、お前北校出身って言ってたけど
北海道にある兄弟校だよな?」
突然のサクヤの発言にフッと思い出したエンが質問した。
これがエンの姉・シンクに関わる質問などと、
誰にもわかるはずがなかった。
朔夜「うん、札幌の端の方にあるんだけど
ここ(本校)に比べたら小さいよ〜」
エン「そか」
水「小、中、高までのエスカレーター校って聞いてるけど」
朔夜「うん、場所も場所だし、周りに普通の学校も多いから
そんなに生徒も多くないよ」
炎「北校…」
水「エン?」
悔しいくらい分かってしまう。
これに気付かなかったらどれだけ楽なのかって考えることもある。
でも、エンの幼馴染だもん、逆に分からない方が問題よね。
炎「いや、気のせいだ」
水「そ?」
そのエンが気のせいって言うなら深くは追求しないことにしている。
今のエンにとってシンクちゃんの名前がちょっとでも出るかもしれない話題は
なるべく避けておきたい。
ひより「ここは小、中、高だけじゃないよね?」
高海「来た時に生徒さんを数人見ましたけど、
幼い子まで居ましたね」
水「えぇ。
本校は幼稚園から小、中、高、大学に専門校まで備わっているの」
「月星学園」の校舎は本当に大きい。
近辺だけでなく、ほぼ全国に知られたその名前は、
「月星」以外にも「学園都市」の名前でも呼ばれている。
高海「幼稚園から大学まで…
どうりで年齢の幅が大きいわけですね」
水「1部の校門だけじゃ規模は分かりにくいと思うんだけど、
全体図で見るとかなり大きいのよ、この学園」
そう言いながら、スイは学生服の内ポケットにしまっていた学生手帳を取り出した。
一般的な手帳と言うには少し違う気がするだろう。
一般的に普及される学生手帳と違うのはそれが小型のノートパソコンの様にも見えるからだ。
と言っても、そんなに便利な機能が備わっているわけではない。
この「月星学園」の東校にしか普及されていないし、
「学園都市」の地域から出ると、本当に生徒手帳としてしか機能しない。
朔夜「うっわ…
大きいで済まされないよ…」
その手帳を開いて、端にある小さなボタンを人差し指で軽く押す。
するとそこまで大きくはないが、立体映像で小さな学園が現れた。
それを聞いてサクヤがさっそく一言上げた。
水「位置としては横浜みなとみらいに面した海の1部分を埋め立てて
そこに大規模な学園都市と言っても良いものが作られたの」
スイは説明しながら更に反対側の端のボタンを押して画像を変える。
学園都市の全体図が現れた。
ひより(その目的は…)
水「いろいろ言われてるけど、
数年おきに起きる学生殺人事件から生徒を守るために
学生たちを一括で管理、守ることができる施設が必要だったって聞くわ」
スイの説明を聞いていたひよりは
エンにからかわれている時とは反対の真剣な恐い表情をしていた。
ひより(やはり間違いじゃない)
水「だから横浜の学生の4分の3くらいの人が集まってるんじゃないかしら」
朔夜「そのための学生寮でもあるんだ」
横浜の半数以上の学生と言うのはとても大きいことだった。
スイには大きくても、エンには小さいことの様だ。
水「うん」
高海「そういえば…6年前にも数人の死者、重軽傷者を出して、」
水「は、
高海くん!それは」
その何気ないスイの説明は今一番触れたくない話題へ移ってしまう。
高海「そして『一人の少女が行方不明に』なったと聞いてます…
だからなんですね」
水「あ…」
エンにとって、わたしにとって、シンクちゃんを知る人たちみんなにとって、
触れたくないこと。
炎「……」
水「エン…」
朔夜「エンくん、どうしたの?
具合でも悪い?
(…もしかしてお姉さんのこと…?)」
分かっているから避けていたけど、
逃げ切ることは出来ないと知らされる。
サクヤもどこか理解があるのだろうか、暗い表情だった。
高海「あれ…
もしかして俺なんか余計なこと言って…」
ひより「みたい」
炎「気にすんな…
あんたは悪くないから…」
しかし、驚いたことに暗い空気はエン本人によって払われた。
更にその暗闇に射す光が3つ。
かのと「あ!エンちゃんだぁ〜!」
水「え?
あ、かのと!」
小等部の知り合い。
幼なじみでもある3つ年下で
”神威陽炎(かむい・かげろう)”の実の妹、
”神威瑠璃(かむい・るり)”と、
ルリを通じて知り合った仲良しな友達。
かのと「久々だね〜!
よっこらせ!」
走ってきて、そのままエンに飛びついたのは”和槌かのと”。
炎「わっバカ!乗っかるな!」
少し大きめのツインテールが特徴で、
少しわがままな、元気が取り得の明るいを超えた女の子。
朔夜(いつものエンくんに戻った
3人とも相変わらず元気だなぁ〜)
その娘たちの登場でいつものエンに戻ったことを確認したサクヤは
心から安心していた。
かのん「こんにちわ、エンさん」
いつの間にかエンの横に現れたのは、
年齢のわりに落ち着いた雰囲気を持ち、
でもどこかポワポワした感じを受ける少女・”倉科かのん”。
彼女はエンの家の敷地内にある”喫茶店「Kanon」”の店主の一人娘である。
炎「お前も気配なくして出てくるなよかのん…
あとそこ!全然隠れられてないからな!瑠璃!」
瑠璃「わ!わ!バレてる」
少し離れた階段へ続く曲がり角からひょこっと小さく顔を出している少女に
エンは声をかけた。彼女が”神威瑠璃(かむい・るり)”。
水「こんにちわ、かのんちゃん、瑠璃ちゃん
仲良し3人揃ったわね」
朔夜「かっわいぃ〜!」
サクヤの反応も納得できるほど、
その3人の女の子はテレビに出る子役と言えるほどに可愛いのだ。
かのと「んにゃ?」
かのん「転入生さんですか?」
見慣れぬ面々を見て、かのとが首をかしげ、
かのんが質問した。
まるで双子のようにそっくりなこの二人は
何をするの時もいつも一緒で、阿吽の呼吸とは良く言ったものだが、
そのくらいに二人のテンポが良い。
水「えぇ。
今日から転入してきた星月朔夜さん」
朔夜「よろしく〜」
水「高海ひよりさん」
ひより「ども」
水「高海秋也さん」
高海「よろしくお願いしますね」
かのん「倉科かのんです。エンさんの家のすぐ近くの喫茶店をやっています」
かのと「和槌かのとで〜す!元気がとりえの可愛い女の子!」
瑠璃「神威瑠璃です。えと、よろしくお願いします」
それぞれが軽い自己紹介を終えた。
みんな笑顔だった。
だが小等部の一人・かのんだけ、
すぐに表情を変えていた。
炎「こら離れろ!かのと!
って、かのんまでなにやってるんだ?」
いつまでもはなれようとしないかのとを軽く叱咤する。
気付いたらかのんまで腕に絡んでいる。

かのん「エンさんの表情が恐かったので、解(ほぐ)そうかと思いまして」
「エンさん…今日この先起こることに対して…なるべく能力は使わないでください」
二言目。
小さな声で、かのんは助言した。
何故能力のことを知っているのか…
考えてもわからないことだが、
かのんのその意味深な助言はかなりの確立で当たることを知っていたエンは
ただ黙って聞いていた。
炎「かのん…?」
かのん「えへへ〜」
かのんが笑顔でごまかしたので、
エンもそのことには触れないでおくことにした。
炎「ったく…ほら、
充分元に戻ったから!」
かのと「うん、安心だね〜!」
かのん「では、そろそろ帰りますね」
エンが軽く笑ったのを見て、かのととかのんはエンからようやく離れた。
瑠璃「あ、あのエンちゃん!」
変わりに近付いてきたのはルリだった。
炎「ん?どした?」
瑠璃「昨日…お兄ちゃんが…」
あったことをそのまま聞かされたかどうかは分からないが、
どうやらカゲロウとのことを耳にしたらしい。
炎「気にすんな
何でもないから、な?」
変な心配をさせまいと、そう答えて、
ルリの頭を撫でた。
瑠璃「うん…」
炎「かのん!帰ったらお店手伝うから!」
少し歩いて、離れた場所に居たかのんの名前を呼び止めた。
かのん「平気ですか?
昨日大変だったと聞きましたけど」
炎「問題ないさ」
かのん「ではお願いします。
実は今日人手不足で…」
喫茶店「Kanon」は大きなお店ではなく、
アルバイトもそこまで多く雇っていない。
そのためすぐ近くに住んでいるエンとスイは、
時々「Kanon」を手伝っているのだ。
炎「わかった」
水「私も行けると思うわ」
かのん「本当ですか?
お二人が来てくださると助かります」
__________
ぴあの「陽炎さんがここの生徒さんで助かったよ〜
居るんでしょ?昨日覚醒した”炎の能力者”」
エンたちが校内を回っている頃、
中等部の校門の前に、一人の少女と、
その隣にはカゲロウが立っていた。
陽炎「……
大学に行ってくる」
突然歩き出したカゲロウに少女は困惑した。
ぴあの「サポートは?
それにこの制服だと…」
陽炎「君の能力があれば何も問題はないだろ?
動くなら能力を使わずとも許可証がある
…それに君は”拾魔神”の一人だ」
その少女を信頼しているのだろうか、
カゲロウはそう告げると、
そのまま中等部の校門を出て行ってしまった。
ぴあの「あ・・・はい!」
一瞬何を言われたか理解できなかったが、
自分に期待してくれているのだと分かり、
大きく返事した。
少女の名前は”結月ぴあの(ゆいづき・ぴあの)”。
謎に包まれてはいるが、明るく、素直な中学生である。
制服が違うところを観ると、
「月星学園」の生徒ではないらしい。
__________
ひより「ここが高等部棟…」
エンたちは高等部の校舎に来ていた。
炎「さて…そろそろ…」
水「来るわね」
だが、何かを悟ったエンとスイは少し眉を顰めながら
その予感に微妙な笑顔を作った。
朔夜(これも懐かしいなぁ)
鋼「エ〜ンちゃ〜ん!」
遠くから一人の少女の声がした。
しかもかなり大きい。
近くの生徒は揃えてそちらに顔を向けた。
炎「あぁ…あんなに遠くから…」
その状況を見て頭を抱えるエンとスイ。
その直後、ま隣で小さな声がした。
氷「最近反応が薄くて悲しいわ…」
朔夜「わわっ」
水「今日はこっちから」
ひより「…忍者?」
高海「それはどうかと…」
突然現れた小さな上級生にサクヤは驚いた。
慣れているはずのスイも驚き、
ひよりはおかしな反応をし、
そのひよりに軽く突っ込みを入れる高海。
鋼「はぁ、はぁ、はぁ…
氷ちゃん…は、早い…」
そして先ほど遠くから大声で呼んでいた女生徒が
ようやくエンたちの前まで走ってきた。
名前は”卯月 鋼(うづき・はがね)”。
高等部3年生で、”卯月コンツェルン”の社長令嬢。
その肩書きに反して、かなりの自由人で、
兄を二人を持ってはいるが、
叔父の影響もあってか、
何かを”作る”ことが大好きな女の子である。
炎「そんなに息切らせるくらいなら走るなよ、はがね姉ちゃん」
鋼「バカ!昨日のこと命(みこと)さんから聞いたよ!」
開口一番怒鳴られた。
どうやらエンの母・ミコトに昨日のことを聞いたらしい。
氷「ケガ…はしてない…?」
すると、エンの腕を掴んで心配そうにエンの顔を覗いた。
彼女も高等部で1年生の生徒。
身体はとても小さいが、
学園開校以来の天才少女で、
能力者で構成された少数精鋭の”魔法生徒会”のメンバーでもある。
”魔法生徒会”のメンバーの証は誰の目にも明らかで、
学生服が赤で構成されている。
さらに肩にはケープの様なものをかけている。
生徒によって個人差はあるものの、
男子はマント、女子はケープを付けている。
炎「平気だって…心配すんなよ」
鋼「心配させてよ…私たちは…
”本物”にはなれないけど」
氷「エンの”お姉さん”なんだから…」
エンの言葉は否定された。
エンにとっては先輩で、でも頼れる存在だが、
少女二人にとっては、エンは”弟”なのだ。
血が繋がっていなくても、
絆で結ばれた姉弟なのだ。
炎「…悪かったよ…
連絡一本するべきでした!」
だからエンは昨日のことを隠していたことを
素直に謝った。
鋼「わかればよろしい!
世話のかかる弟くんだ、うん」
氷「それじゃねエン
私たちは研究に戻るわ」
エンの言葉に納得した二人は、
かなり忙しい様で、
腕でゴメンと謝りながら、急ぎ足で部室に戻って行った。
ひより「台風みたいな人たち」
朔夜「もっと凄いこともあるんだよ♪」
ひよりは唖然としながら感想を述べたが、
その直後、
サクヤがまるでハガネたちを知っているかの様な発言をした。
炎、水「え?」
朔夜(は!やば!)
「でしょ?なんとなくそんな気がするの」
当然、エンもスイも驚いた。
でもサクヤはなんとか誤魔化した。
炎「あぁ、こんなの序の口」
水「抱きついてくることもあるもんね」
炎「あれはさすがに恥ずかしいもんな〜」
とくに不思議に思わなかったのか、
エンもスイもそのまま会話を続けている。
どうやら誤魔化しに成功したらしい。
朔夜(あぶないあぶない…
やっぱ難しいね…)
__________
鋼「良かった…
カゲロウさん手加減でもしたのかな?」
部室の中。
エンとカゲロウの戦いに疑問を感じた二人の義姉。
氷「それは多分あの人の力で完治させたんだと思うわ…
戦闘があって、エン以外の人も無傷は不自然よ」
あの人。
誰なのかはわからないが、
どうやら二人はその”あの人”をとても信頼しているらしい。
鋼「そうね…
もう一人の娘…」
氷「あの娘が”星月朔夜”ね…」
そして引っ掛かる名前。
__________
ぴあの「迷子の迷子のうさぎちゃん〜
あなたのさがしも〜のなんですか?」
中等部の廊下。
先ほど校門に居た少女が、呑気な歌を歌いながらリズムよく歩いている。
女生徒「ねぇ、あの娘可愛いね」
「ここの娘じゃないよね、制服違うし」
「転校生かな?」
通りすがりの生徒にも驚かれるほど、
その少女は美少女の様だ。
ぴあの「素性を聞いても答えれない、
なまえ〜は…あ、これは答えていいのか」
音「いいえ、構いませんよ
では、さっそく受け取りに行って来ます」
その少女の先で、
音楽室から出て来たエンの幼なじみ・オン。
ぴあの「にゃんにゃんにゃにゃん♪
…うさぎはにゃんって鳴かないね〜」
音「あ!
君!危ないですよ!」
どうやら目を閉じて歩きながら歌っていたらしく、
オンに声をかけられた時にはもう遅かった。
ぴあの「え?
わわわわっ」
どさ
音「ふぅ、
危なかったです」
間一髪。
走り込んで抱きとめ、助けたのは声をかけたオンだった。
もし声をかけなかったら…
気付くことがなかったら…
足を踏み外して大怪我をしていたかもしれない。
ぴあの「////////」

音「あの…大丈夫でしたか?」
ぴあの「あ……はい…」
あまりの驚きと、
自分でもわからない感情に声が出なかったが、
何とか出せたのは小さな返事だけだった。